6月23日静岡市葵区のしずぎんホールユーフォニアで開催されたしずおか健康セミナー講演会の模様 静岡新聞 SBS
メタボリックシンドロームと
中高年の健康対策
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しずおか健康セミナー「メタボリックシンドロームと中高年の健康対策」(静岡新聞社・静岡放送主催、味の素株式会社協賛)が6月23日、静岡市葵区のしずぎんホールユーフォニアで開催された。高橋迪雄東京大学名誉教授・味の素株式会社健康基盤研究所初代所長と渡辺達夫静岡県立大学食品栄養科学部教授の基調講演に続いて、2氏と女優の秋野暢子さんら5人によるパネルディスカッションが繰り広げられた。コーディネーターは鈴木通代SBSパーソナリティー。講演会の模様を紹介する。
〈企画・制作/静岡新聞社営業局〉
パネルディスカッション「メタボリックシンドロームと中高年の健康対策」
食事も運動も無理せずに

高橋 迪雄(たかはし・みちお)氏
東京大学大学院博士課程修了(農学博士)。 日本獣医学会理事長、日本繁殖生物学会理事長 を経て、現在、東京大学名誉教授、 味の素(株)健康基盤研究所初代所長。

時代の変化がもたらしたメタボリックシンドローム

○鈴木 メタボリックシンドロームという言葉を聞かない日はないのではと思うほど、メディアをはじめ、さまざまな話題の中で耳にするようになりました。肥満やメタボリックシンドロームが注目されるようになったのはなぜでしょうか。

○高橋 人類は長い間狩猟・採取生活の中で、朝から晩まで動き回っていたはずです。この時代の運動量が今でも私たちのエネルギー消費量の基本になっているとすると、現代は、極端にそれが減っていることになります。近年寿命が著しく延長したために、毎年1、2キロ程度の軽度の体重増も、それが長年累積することで多くの人が肥満の状態に陥り始めました。メタボリックシンドロームは肥満の状態が継続した結果起きてくる身体の症状ですが、様々な健康障害をもたらすリスク因子であることが明らかになってきたので、俄然注目を集めるようになったのでしょう。
○坪井 現代人の食生活が変わったと言えば、第二次世界大戦を境にして日本人の食生活とその病気は随分と変わりましたね。たとえば、戦時中、日本人はよく白米を食べました。その頃は、梅干しとか佃煮とか、塩辛いものをおかずとして食べて塩分をたくさんとっていたんです。当時、死亡率が多かった病気は、脳血管疾患や低栄養などが原因として起こる結核。しかし、今は、どんどん変化して死亡率が最も多い病気はがんですね。その背景には、飽食や食習慣のめまぐるしい変化が大変影響しています。ただ、あまり悲観的に考えていただきたくないのは、日本が世界一の長寿国、しかも健康長寿国であるという事実です。これは、たんぱく質の普及が理由だと言われています。今の子供たちを見ると、中高年に比べ、より背が高く、足が長くなっていますよね。これはたんぱく質を多く取るようになったからと言われているんですね。厚生労働省は最近、1に運動、2に食事と言っています。とにかく体を動かすということが最も大事だと。食べるものに関しては、それぞれの人の顔が違うように体質も異なりますから、個人個人の栄養必要量を算出して自分に合った量をとってほしいと呼び掛けています。
 私たちは祖先から受け継いだ体質をそれぞれ持っています。これから先、その体質と食生活を上手に、維持していくことが大切ですね。

渡辺 達夫(わたなべ・たつお)氏
京都大学大学院農学研究科博士課程修了(農学博士)。トウガラシ成分の生合成・酵素を利用した合成システム・生理作用を主に研究。現在、静岡県立大学食品栄養科学部教授。


規則的な食生活と適度な運動を心掛けて

○鈴木 そうですね。食生活の変化といえば、私たちの食材一つ一つもそうですが、食べる時間帯ですとか、生活スタイルすべてが変わってきています。女優の秋野さんは、お仕事柄、生活リズムも不規則になりがちなのではないかと思うのですが、どのようにして、美しいプロポーションを維持していらっしゃいますか。

○秋野 女優の仕事は不規則と思われがちですが、私はわりと規則正しい生活を送っていますね。ドラマの撮影が入りますと、早朝から始まって深夜までと、そういうスケジュールもありますが、基本は、朝5時半には起きて、娘のお弁当を作って、朝食を取るのは7時15分ぐらいから8時ぐらい。それから、娘を学校に送り出して、仕事に出ます。お昼は12時。夕食も6時半から7時と規則的です。そして、早い日には娘と一緒に夜9時半から10時には寝てしまうんです。私の生活は規則的に食べて、睡眠時間もたっぷりです。

秋野 暢子(あきの・ようこ)さん
女優。ドラマ、映画のほか、バラエティー、舞台などで活躍。現在は出版、講演会などを積極的に行う。著書に「スーパースマイルダイエット」などがある。

○鈴木 非常に理想的な生活を送ってらっしゃるんですね。お子さんのお弁当もつくっているとおっしゃいましたが、ご自分で食材やメニューを選ぶ時に気をつけていることは何ですか。

○秋野 仕事で体重を落とさなければならないときは、1日に1500キロカロリーに減らしますが、それ以外は、1日に1800キロカロリーぐらいを、なるべく午前中に取るようにしています。食材については、私はあまり肉を食べないので、たんぱく質は基本的に大豆かお魚を中心に取るようにし、あとは朝はバケツ1杯の野菜を食べるんです。娘にいつも驚かれるんですけれど。

○鈴木 バケツ1杯ですか?

○秋野 朝、しっかり野菜を食べて、あと夜までは自由に物を食べていいぞ、と自分に体に教え込むんです。朝、たくさんのお野菜を取って、その後は代謝が高まるようなものをなるべく取るようにしています。そして、年齢に従って基礎代謝量が落ちてきますから、運動は心掛けています。一日に1時間から1時間半ぐらいはトレーニングをしています。
○鈴木 やはり食生活に加えて、もう一つ大事なのが体を動かす運動ですね。スポーツクラブでもメタボリックシンドロームを意識して、体を動かす方が増えているのでしょうか。

○市村
 うちのスポーツクラブでも運動不足の解消、脂肪を少なくしてシェイプアップをしたいという方がもう半数以上を占めると思います。秋野さんのように1日1時間半運動するというのは、ほんとうに気持ちがしっかりしていないと、続けることは難しい。ですから、そういった環境を求めてスポーツクラブに足を運ぶ人が増えていると思います。スポーツクラブに通わなくても、ウォーキングしている人も多くなりましたね。ただ、たいていの人が、一度は挫折を味わうなどして継続することの難しさを痛感しているのではないでしょうか。

○鈴木
 会員の方には日ごろ、どのようなアドバイスをしていますか。

○市村 個人の既往症などに合わせて、プログラムやメニューを組んでいますが、やはり最初は、週に何回来ましょうとか、主婦の方でしたら、歩いて買い物へ行くようにして、1日5000歩は歩くようにしましょう、というように、実現できそうなところから目標設定をします。そして最終的に、ホノルルマラソンへ行きましょうなどと、大きな目標を設定するようにアドバイスしています。

○鈴木 さて、メタボリックシンドローム対策として、内臓脂肪を減らすことが重要だと言われています。トウガラシに、その効果があるそうですが、こういった辛いものをどのようにして食べれば良いのでしょうか。

○渡辺 トウガラシは、中に入っているカプサイシンがとても安定した効果を出します。煮物、炒め物、揚げ物などどんな食べ方をしても体に良いと思います。どうしても辛くて食べられないという人は、冷やすと食べやすくなります。また、ヨーグルトなどと組み合わせてもいいかと思います。ただ、大切なのはトウガラシに関わらず、まずは、効果的な食材を上手に、おいしく食べる工夫。代謝を高める辛いものなどは交感神経を活性化しますので、夜に取ると少し睡眠時間が短くなったり、寝つきの時間が長くなったりすることがあります。ですから、午前中に取り入れるのが良いと思います。昼間でしたら、交感神経がうまく働いて効果的です。

坪井 厚(つぼい・あつし)氏
管理栄養士。藤枝市立総合病院診療技術部技監兼臨床栄養科長。平成17年から県給食協会県本部会長、平成18年から県栄養士会副会長を務める。


たんぱく質とアミノ酸で上手に代謝を高める

○鈴木 運動も食事も、個人の体質に合った方法と分量を考えないとうまく代謝しないということですね。中高年の代謝を活発にするにはどうすればいいですか。

市村 久美子(いちむら・くみこ)さん
ルネサンス静岡インストラクター。福島・東京の同クラブでチーフトレーナーを務め、現在、静岡を拠点に25店舗の品質管理やトレーナー育成を担当。

○高橋 年を取るにつれ、適応力は下がってきますから無理をしないことが大切ですね。運動も、減量も急激には行わないことです。ダイエットをして自分がため込んだ脂肪を燃やしている間は、食べなくてもエネルギーの必要量が満たされてしまいますから、食事から十分なたんぱく質が入ってこなくなる危険があります。特に高齢の人は、たんぱく質とアミノ酸を取らないと、体を壊して肥満の状態よりも、むしろ危険です。

○坪井 私もそう思いますね。今、病院では45%から50%ぐらい入院患者の中に低栄養の方が存在すると言われます。介護施設の場合ですと、実に75%以上低栄養です。ですから、メタボリックシンドローム、生活習慣病などと過栄養が大変話題になっていますが、年を取ってあまり気をつけ過ぎると低栄養となり、ほかの感染症、合併症を起こしてしまうんですね。ですから、上手に太ることが大事。体重制限はほどほどに、「良い加減に」行うのが良いと思います。
○鈴木 日ごろの食生活の中で、塩分をあまり取り過ぎないようにしようとか、濃い味のものを薄味にしていこうとか、そういった見直しなども必要になってくるかと思うのですが。

○坪井
 塩分については、これは個人差が相当ありますが、今は1日に10グラム〜12グラムを取るのが水準となっています。人によっては15グラム〜16グラム取っても大丈夫という人もいますので、自分のDNAが塩分に強いかどうかをまず調べることと、血圧を常に測れるような状況にしておくことが大切です。重要なことは、体の機能が衰えていなければいいということ。健康診断も率先して受けていただきたいと思います。平成20年から特定健診と保健指導を厚生労働省が積極的に始めます。これは医療費が32兆円とかさんでくるため、メタボリックシンドロームなど生活習慣が影響する病気に関しては、自ら食生活を見直すなどの行動を起こしてもらいたいというのが狙いです。これからは、自分の健康は自分で守る、そういう時代になってくると思います。

鈴木 通代(すずき・みちよ)
SBS パーソナリティー
 
内臓脂肪の蓄積によって起こる複合生活習慣病のこと。肥満の症状に加えて、高脂血症、高血圧などの生活習慣病のうち、二つ以上の症状がみられる場合を定義付けている。特に自覚症状がなくても、動脈硬化を起こしやすく、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全になる危険性が高い病気の予備軍といわれている。

肥満のメカニズムを知ろう
基調講演
演題「肥満の生物学 ヒトはなぜ太るのか」
東京大学名誉教授・味の素(株)健康基盤研究所初代所長
高橋 迪雄(たかはしみちお)氏
現代人の肥満と人体の仕組みの関係
 現代に生きる私たちと狩猟・採取生活をしていた時代のヒトを比べてみると、寿命をはじめ、運動量、肉体労働量、食生活など数多くの点で異なっています。今の私たちに肥満やメタボリックシンドロームという問題をもたらしている背景には、こうした人類の長い歴史があります。
 農耕が始まって以来、私たちはそれまでの狩りの獲物に代えて、穀物などを重要な栄養源として摂取するようになりました。三大栄養素の一つのたんぱく質は、20種類のアミノ酸で構成されており、そのうち9種類は人間の体では作れないので食事から取る必要がありこれらを「必須アミノ酸」といいます。穀物ではある種の必須アミノ酸が少ししか含まれていないことから、食事の量を増やすことが起きたのですが、ほとんどの人が過酷な農業労働に従事していたため、過食による過度な肥満の発生は防げていたと考えられます。
 実は狩猟生活時代には、加齢に伴って太っていくことはむしろ自然なことだったと考えています。その時代、年を取ることは食物の獲得能力が低下することを意味します。基礎代謝量を下げること、食べ物が余分にあるときにそれを脂肪として蓄えること、つまり適度に肥満することは加齢に対する適応だったのでしょう。この仕組みは私達にも残されているはずです。問題は、現代、運動量が極端に減ってしまったこと、寿命が延びて軽度な肥満でも長年の累積の結果、健康問題を引き起こすほどの肥満に到達してしまうことです。
 
食材を活用して基礎代謝量を増やす
 人間の体重は、エネルギーの出入りで基本的には決まっています。加齢と共に基礎代謝(エネルギーの出)は確実に減少して行きますが、基礎代謝の減少に完全に一致して食べる量(エネルギーの入り)が減れば、決して太らないというのが理屈です。しかし、たとえば、中高年が1年に1〜2キロ程度体重が増えることは、加齢に伴う自然な現象と考えられますから、むしろ健康な証と考えても良いくらいです。このような軽度の継続的な肥満は、食べる量の減少が、基礎代謝量の減少に5年程度遅れて起きていると考えれば説明できます。このような軽度の肥満は、寿命が50歳だった時代には問題にならなかったのですが、1キロずつ増え続けた場合でも、それが30年間続けば、60、70歳になると、30キロ、40キロの脂肪がついて、メタボリックシンドロームにならざるを得なくなるのです。
 食事の量、つまりエネルギーの入りを制限するのではなく、基礎代謝量、つまりエネルギーの出を増やすことも、肥満に対抗する重要な手段です。もし基礎代謝量を5年前のレベルに保てれば、肥満は起きてこないというのが理屈だからです。
 トウガラシは世界の様々な地域で食べられていますが、トウガラシの辛味成分のカプサイシンには基礎代謝量を上げる作用があることがよく知られています。また、いったん肥満してしまった人が減量するためには、どうしてもダイエットが必要となりますが、ダイエットに付随して起きる空腹感や疲労感を緩和することも知られています。私たちには、過去に「トウガラシ食文化」は根付かなかったようですが、私たちの多くがメタボリックシンドロームに悩まされるようになった現代は、改めてこのような食材の活用も積極的に考えていかなければならなくなった時代なのかもしれませんね。

新しい成分「カプシエイト」に注目
基調講演
演題「食べることで代謝を高める食品成分 トウガラシを中心に」
静岡県立大学食品栄養科学部教授
渡辺 達夫(わたなべたつお)氏
食べるだけで代謝効果UP
 肥満と食事は密接な関係にあります。肥満は、食べ過ぎ、栄養が偏った食事、運動不足―が大きな要因を占めています。人のエネルギー消費は、基礎代謝や安静時代謝が全体の60%から75%。運動では1日1万歩歩いても、全体の15%ほどです。残りの部分は、ご飯を食べることでエネルギーを消費します。食事でのエネルギー消費を食事誘発性産熱(DIT)といい、DITは食べ方によって変わり、食品によってはDITを高める効果があります。適切な食事をすることで、運動に近い効果が得られるのではないかと考えています。
 トウガラシに含まれているカプサイシンという成分には、エネルギーの消費量を高める作用があります。英国の大学が行った実験では、食事をどのくらい取ると、どのくらいのDITが発生し、これにチリソースを3グラムかけて食べるとDITが2倍になるというデータが出ています。ご飯を食べるだけで、エネルギーの消費が非常に高まるという結果でした。
 
さまざまな食品で効率良い消費
 トウガラシは肥満を防ぐ効果があると言われていますが、どれくらい食べれば肥満が防げるかというと、まだ解明されていません。逆にトウガラシを食べ過ぎれば、胃がんになる確率が高くなる危険性があります。
 辛いもの以外にも同じような働きをするものがあります。最近「CH-19甘(アマ)」という辛くないトウガラシに含まれる成分、カプシエイトが注目されています。カプシエイトはカプサイシンと構造が似ていて、辛くはないが、ほぼ同じような生理作用があるといわれています。ですから、カプシエイトにもエネルギー消費を高める働きがあります。実験ではCH-19甘を食べた人は、そうでない人に比べ、内臓脂肪が減っているという結果がでています。
 実際に食べることによってエネルギーの消費が高まるものは、このほかにも、いくつか発見されています。今後は食事と運動を組み合わせることで、エネルギー消費のさらなる増大が期待できるのか、研究が必要だと考えています。

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主催/静岡新聞社・静岡放送 協賛/味の素株式会社
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